新・読み書き算盤 the three R's 识字写算 чтение, письмо и арифметика
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    数の数え方
     
     
     
    数の数え方について(指とそろばん)

      桁が増えてくると、数字を並べただけでは分かりにくいので、いくつかの桁をまとめて、区切ると見やすくなって便利である。
     そこでどのように区切るかが課題となる。中国では、漢字を用いて数を表記したが、4桁区切りを採用した。江戸時代が終わるまで、日本は中国の数え方を用いていた。すなわち、まず「千、百、十、一」の4桁をひとまとまりとする。そして、4桁ごとにまとめて「京、兆、億、万」とつなげて、大きい数を表わす。これは4桁区切りで一貫しているため、音声による数字の伝達は、今日でも4桁区切りで行う。
     しかるに、明治に入ると、西洋から3桁区切りが入ってきた。会計実務では、3桁区切りが主流となった。確かに目で数字を追うときは、3桁ごとにコンマが入っている方が分かりやすい。4桁ごとにコンマをいれると、中の数字が見づらくなる。
     数学者と会計実務者の間で折り合いが付かないまま、ずるずると月日が立ち、結局、目は3桁区切り、耳と口は4桁区切りという食い違いが生じたままとなった。したがって、左手で三角を書き、右手で四角を書くという、アクロバットのようなことをしている。大きい数を扱う財務諸表を口頭で説明するときは、読み上げる人も大変、聞く人も大変、ということになる。最初はともかく、疲れてくると、どこが億で、どこが万なのか、混乱をきたしてくる。算盤の読み上げ算などで、次々と大きい数を読み上げる人や、聞いてすぐに正確な位置の珠に指を置くことができる人をみると感心してしまう。

     現在の算盤は、会計実務に合わせて3桁ごとに定位点の印が入っている。もっとも、昭和10年頃、数の読み上げ方に合わせて、4桁区切りの算盤が作られたこともあったらしい。しかし、普及することなく、戦後は3桁区切りが主流になり、今日に至っている。電卓も3桁区切りである。
     そのため、3桁区切りの大きい数字を見ると、まず下から「一、十、百、千、万」と数えていって先頭の数字まで行き着き、それから改めて大きい桁から読み上げることになる。このやり方だと間違わないだろうが、これは二度手間である。なんとかずれを解消して、目と口を合わせることができたら、脳の負担も減るであろう。
     ちなみにインドの桁の区切り方は独特で、小さい桁からいくと最初は3桁で区切るが、その上は2桁ずつ区切っていく。そこで、カシオ計算機が、コンマの位置とインド式の読み上げ方に合うような電卓を作ったところ、インド人に好評でヒット商品になったらしい。つまり、10桁の数「9,876,543,210」を「9,87,65,43, 210」と区切るのがインド式である。使いやすいと思われるかどうか。ちなみに、「12,34,56,789」を見て、速やかに「一億 二千三百四十五万 六千七百八十九」と読み上げられるだろうか?

     小学生が教室で、4桁区切りの読み上げ方と3桁区切りの書き方の食い違いを指摘すると、先生方が困ってしまうので、桁の区切り方にはなるべく触れないようにしている。大きい数は、「兆、億、万」という呼称を紹介するくらいで、コンマを付けないままに通り過ぎようとしている。そのため「400×5000はいくらになりますか」という問題が出ると、正解は「2000000」である。0をずらずらと並べるだけで、コンマは書き込まない。
     この課題を避けたままで、生徒をあれこれと難しい算数の問題に取り組ませるのは、いかがなものかと思う。数を数えることは、算数の基礎である。

     そこでどうすべきかということになるが、ここでも指の形に着目する。左手の指を立てると、小指から人差し指まで腹が3つある。この3つを3つの桁に当てはめて位取りをして、表を作った。左手の親指まで使うと、十兆の桁まで表せる。これは偶然ではあるが、西洋での3桁区切りと同じである。
     右手の指は、小数点以下の数を当てる。「ミリ、マイクロ、ナノ、ピコ」も3桁区切りであり、3桁と腹の位置が合致し、小指から人差し指へと1,000分の1ずつ小さくなる。
    さて、3桁区切りに合わせた読み上げをするとなると、「兆、億、万」という呼称はもちろん使えない。新しい呼称を見つけなければならない。
     もちろん、一般的に通用するものが、どのくらい必要とされるかどうかは分からない。それでも、長い桁の数字を、コンマの位置のとおりに読めばよいとなれば、ずいぶん楽であろう。小学校の算数でも、大きい数字をきちんと扱える。
    意味と音の双方が、しっくりくるものがいい。英語は日本語になると長すぎるので、簡略なものがよい。
     4桁区切りの「兆、億、万」に替えて、3桁区切りの「チョウ、ビル、メガ、キロ」という呼称を付した表を作成した。呼称に慣れるまで、コンマに替わる記号も考えてみた。数字がたくさん使用される科学技術や経済・統計の文献を読むときも役に立つのではないだろうか。
     



    建設途中の東京スカイツリーを背景に隅田川の清澄と日本橋箱崎中洲の間に架かる清洲橋