中国語は漢字を使用しているので、簡体字であったとしても、目で見ると比較的なじみやすいように感じる。正しく理解するのはそう簡単ではないが。
それに対して、音はまったく異質であり、耳になじむようになるには、時間がかかる。しかも声調をマスターするのは大変である。
中国語の辞書はピンインの場合、abc順に並んでいる。一見、西欧諸語と同じで使いやすそうに思えるが、実は中国語の音のシステムは、abc順では理解できない。もっとも、西欧諸語だって、習慣としてabc順を用いているだけで、abc順が音のシステムを表現しているわけではないから、同じことなのだが。
今のところ辞書を引くとなると、abc順で探すしかないのだが、音のシステムはどうなっているのだろうか。いまから100年前、辛亥革命の後成立した中華民国の教育部は「注音字母」を定めた。これは、現在台湾で使われている「注音符号」とほぼ同じものである。中華人民共和国になってから、長期にわたって模索されてきたローマ字で表記する方法が整理され、ようやく1958年に漢字拼音(ピンイン)法案が公布された。ローマ字を使用することにより、パソコンで入力する時代になっても、その利便性は変わらない。
しかし、注音符号は中国語の音のシステムの本質を衝いていrために、今日でも有用性を保っている。それは、介音によって漢字が4つのグループに大別できることを、はっきり示したことである。
そのグループとは3つの介音「y, yu, w」すなわち注音符号の「丨ㄩㄨ」と、介音のない場合の4つである。
注音符号は優れているものの、いくつか細部で不十分なところがある。そこで、現行の注音符号に3つの母音記号を加えると、ピンインの表記との相違点が解消され、しかも注音符号の長所を再認識することができる。